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【税理士実務】上場株式の相続税評価における「4つの価額」自動判定と、米国株の日本円評価について

税務
2025年12月16日

相続税申告において、上場株式の評価明細書作成は「単純作業だが、ミスが許されない」業務の一つです。

特に、株が好きで保有銘柄数が多数ある場合や、米国株(外国証券)が含まれる場合、その作業負荷は一気に跳ね上がります。

課税時期の終値だけでなく、過去3ヶ月分の月平均額を調べ、さらに外国株であれば為替レート(TTM)を取得して邦貨換算する……。

この一連の作業に、Excelと手計算で多くの時間を割いていないでしょうか?

本記事では、当サイトで公開している「相続税評価シミュレーター」が、どのようなロジックに基づいて**「4つの価額の有利判定」「米国株の邦貨換算」**を行っているか、その内部仕様(アルゴリズム)について解説します。

単なる概算ツールではなく、「検算(ダブルチェック)に耐えうる仕様」を目指して開発された背景をご確認ください。


1. 国内株式における「4つの価額」の取得と判定ロジック

財産評価基本通達に基づき、上場株式は原則として以下の4つのうち「最も低い価額」で評価します。

  1. 課税時期の最終価格
  2. 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
  3. 課税時期の前月の毎日の最終価格の平均額
  4. 課税時期の前々月の毎日の最終価格の平均額

本ツールでは、銘柄コードと課税時期(日付)を入力するだけで、API経由で信頼できる金融データを取得し、これら4つの数値を瞬時に算出します。

【ここがポイント:休日の判定】

課税時期が土日祝日の場合、「直近の金曜日(または相場のある日)」のデータを参照する必要があります。

本ツールではカレンダーロジックを実装しており、自動的に直近の営業日の終値を採用する仕様となっています。

2. 米国株(外国証券)の評価ロジックと邦貨換算

本ツールの最大の特徴は、計算やデータ収集が面倒な「米国株」に対応している点です。

外国株式の評価は、国内株と同様に「4つの価額(課税時期の終値、3種類の月平均)」を比較しますが、そこに「邦貨換算」のプロセスが加わります。

本ツールでは、財産評価基本通達に基づき、以下の正しい手順で自動計算を行っています。

① ドル建てでの「4つの価額」の算定

まず、ドルベース(現地通貨)で以下の4つを取得・算出し、その中から最も低い価額を選定します。

  1. 課税時期の前々月の毎日の最終価格の平均額(ドル)
  2. 課税時期の最終価格(ドル)
  3. 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額(ドル)
  4. 課税時期の前月の毎日の最終価格の平均額(ドル)

② 「課税時期の為替レート」での一括換算

次に、決定したドル建て評価額に対し、「課税時期(死亡日)」の為替レートを乗じて円換算します。

【ここが実務ポイント:TTBと一律換算】

実務上、為替レートはTTB(対顧客電信買相場)を用います。また、月平均の株価であっても、為替レートは平均せず、「課税時期のレート」を一律で使用するのがルールです。

原則は、該当の外国株式を所有する金融機関のレートを適用するとなっていますが、レートを公表していない(容易にわかならない)金融機関もあります。

この場合、三菱UFJが公表しているレートを代用することが多いです。(金融機関ごとに、レートの差はほとんど無いため。)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング公表値

3. 「計算過程」の可視化とエビデンス

税理士業務において最も怖いのは「ブラックボックス化した数字」です。 「なぜこの評価額になったのか?」が説明できなければ、申告書には記載できません。

そのため、本ツールでは計算結果(最終的な評価額)だけでなく、「計算過程」画面上に表示しています。

  • 当該月、前月、前々月の「月平均額」の具体的な数値
  • 採用された為替レート
  • 時価との乖離率

現在、全ての「計算過程」をcsv出力する機能を開発しております。

最終的に、手元のExcel等で検算したり、評価明細書作成に役立てたりすることを目指しています。

4.「時価との乖離率」で相続対策のヒントを

最後に、本ツール独自の機能として「時価との乖離率」の表示について触れておきます。

相続税評価額は「過去の平均」を用いる性質上、「直近で急騰している銘柄」などは、現在の時価よりも評価額が低く算出される(=含み益に対して税金が安く済む)ケースがあります。逆に、暴落局面ではその逆も起こり得ます。

  • 評価額 < 現在の時価: 含み益があり、かつ評価は低く抑えられている(相続しても良い銘柄)
  • 評価額 > 現在の時価: 時価よりも高く評価されてしまっている(納税資金のために売却を検討すべき銘柄)

計算結果と共に表示される「乖離率」を見ることで、こうした判断の一次チェックを一瞬で行うことが可能です。

5. まとめ

本ツールは、開発者自身が「実務で本当に使えるレベルのものが欲しい」という思いから、細部のロジックまで作り込んだものです。

もちろん、最終的な申告価額の決定は税理士の先生方の専門的判断になりますが、その前段階の「面倒なデータ収集と計算」を0秒にするツールとして、ぜひご活用ください。

まずは、お手持ちの事例やご自身の保有株で、計算の正確さとスピードを体感してみてください。

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